手軽な美容治療 ヒアルロン酸注射について
最近当院でも施術が増えてきているヒアルロン酸注入について解説します。
当院で施術希望の方の多くがほうれい線を希望されます。その次に唇や涙袋の注入が多いです。
まず、顔面の老化とは、骨・筋肉・皮下組織・皮ふ(表皮〜真皮)全ての層で萎縮と弛緩が起こることを言います。老化過程で皮膚の厚さと弾力性が喪失し、皮膚萎縮、弛緩、およびシワになります。これらの皮膚の変化は、慢性的な日光暴露の光老化によって悪化します。
シワは、顔、首、手の背に目立ち、皮下の筋肉の動きによっても老化に伴う筋肉の菲薄化によっても生じます。
骨と皮膚では70%以上がⅠ型コラーゲンで形成されています。コラーゲン量のピークは30歳代といわれ、年齢と共におよそ1%ずつ減少しています。男性は、皮膚の厚さはコラーゲンの変化と平行していますが、女性はエストロゲンの影響で50歳までは変化が少なく、その後減少します。骨粗鬆症のリスクファクターとして、閉経(日本女性の平均50歳)、BMIの減少、プレドニン療法、甲状腺ホルモン擦法、カフェインの過剰摂取があります。骨密度は皮膚の厚さと相関しており(直接の因果関係は不明)、年齢とともに骨密度が小さくなり皮膚が薄くなります。これらもシワの原因となります。老化と共に表皮は薄くなりますが、エストロゲン療法と運動が骨密度増加と関連し、皮膚の肥厚に効果があると言われています。
1.シワ治療の種類
シワの治療を考える上で重要なことは肌のキメ、小じわ、シワ、大ジワ、たるみと部位やそれぞれの状態の違いをきちんと把握して考えることです。
化粧品の使用、レーザーなどの機器による方法、ヒアルロン酸やPRPの注入、ボツリヌストキシン療法、スレッドリフトなどの手術療法があります。
★ヒアルロン酸注入では静止時に刻まれている静的なシワ、たるみ、による陥凹が適応で、真皮内、または皮下に製剤を充填して、シワや陥凹を平坦化させます。
★ボツリヌス毒素注射は動的なシワである表情ジワが適応で、薬剤により神経筋接合部のアセチルコリンの放出を阻害することでシワを抑制さます。どちらの治療も明確な改善が得られます。
★レーザー、高周波(RF)や高密度焦点式超音波(HIFU)などの機器を用いた治療は、シワの本体である真皮の変化を改善させる治療です。内的・外的要因によって変性した膠原線維や弾性繊維に熱による損傷を与え、その修復によって弾力のある線維組織に置き換え、加えて、熱によって放出されるヒートショックプロテイン(HSP)によって線維組織を増生させます。
こうした作用により、減少した状態にある真皮の線維密度を高め、また、変性した線維成分の割合を減らして機能的な線維に置き換えることで、結果的にシワを目立たなくさせます。
2.ヒアルロン酸の適応
まず、ヒアルロン酸注入によるシワ治療の適応か否か確認します。
シワは、
①ちりめんジワなどの表皮〜真皮乳頭層までの変化により生じる小ジワ
②刻まれたジワ・たるみによりシワなど真皮網状層まで変性を起こす大ジワ
③表情筋が繰り返し収縮することにより起こる表情ジワ
の3つに分類されます。
③表情ジワは、一般的にボツリヌストキシン療法がより高い効果を期待できます。
①は化粧品やれレーザー治療の適応にあります。
②大ジワに対してヒアルロン酸注入療法を用いることが多いです。
従来まではコラーゲンやエラスチン減少に伴う肌質変化である小ジワに対してヒアルロン酸注入療法のみで改善することは難しいと言われてきましたが、最近では皮膚状態(保水力、弾力性)の改善を目的として皮内に注入するヒアルロン酸製剤も開発されています。
緩んできた支持組織や、ボリュームロスにより生じる大ジワなど、状態により使用する製剤と治療法を調整することが大切です。
多くの患者様は、シワを消すことが治療のゴールと考えますが、シワだけにヒアルロン酸注入を行うと注入量が増え、顔のバランスが不自然になってしまうことがあります。
シワを取る治療は美しさを構成する要素の一つにすぎません。
3.ヒアルロン酸とは
ヒアルロン酸はムコ多糖類という物質の一種で、もともと人間の体内にあるものです。
保水成分として肌のハリを出したり、関節の動きをスムーズにする役割を担っています。
加齢によるシワやたるみはヒアルロン酸が減少することが大きな理由です。
美肌治療だけでなく、鼻を高くしたり、豊胸など広く使われています。
質の良いヒアルロン酸を肌に注射すると、注射した部位の皮膚の潤いが保たれ、ヒアルロン酸が吸収されてなくなるまでの間、みずみずしい肌であり続けます。
そのたもヒアルロン酸を注射した肌はしていない肌に比べて老化の進行が遅く、ヒアルロン酸が吸収されてなくなった後も若々しい状態になります。
4.ヒアルロン酸の持続効果期間
注入するヒアルロン酸の種類によって持続期間は変わります。当院では厚生省が認可を与えているアメリカのアラガン社製のボリューマとボルベラの2種類を使用おります。
大体1年6か月程度効果が持続するといわれており、定期的に注入する方が非常に多いです。
5.ヒアルロン酸注入方法
座位でどこのシワが気になるのか、どういったプランで入れていくのかを患者様と話し合いながら決めていきます。当院では過剰な注入は避けるためまずは1cc(1本)で最大限効果が出るように注入することを意識しております。
部位によりますが座位でバランスを見ながら注入します。最初にチックとした軽度の痛みがある程度でその後はヒアルロン酸の中にも麻酔が含まれているので大きな痛みはほとんどありません。当院ではマイクロカニューレという針を使用し、ゆっくり丁寧に注入するようにしております。そうすることでヒアルロン酸の最大の合併症である血管塞栓を予防できると考えております。
6.ヒアルロン酸の注意点
ヒアルロン酸注入の注意点として、たくさん入れすぎてパンパンにならないようにすることです。先ほども述べたように、シワだけにヒアルロン酸注入を行うと注入量が増え、顔のバランスが不自然になってしまうことがあります。シワを取る治療は美しさを構成する要素の一つにすぎません。
ヒアルロン酸が吸収されてなくなった後で、シワが増えて前よりも老けることはありません。無理して必要以上にヒアルロン酸を注入して、皮膚を過度に膨らませて伸ばしてしまうと、ヒアルロン酸が吸収された後しぼんで皮膚が緩んだりシワが増えてしまう可能性があります。
7.ヒアルロン酸による最大の合併症~皮膚壊死~
ヒアルロン酸注入により、血管塞栓リスクがあることはご存じですか?
こめかみや鼻筋、頬やマリオネットラインはリスクの高いエリアであり、注意が必要です。またベテラン医師でもこのような合併症を発症することがあり注意が必要です。合併症の多くは治療直後〜数日以内に生じる早発性合併症で、内出血・紅斑など比較的軽症のものから塞栓による皮膚壊死・失明など重篤なものまでざまざまです。注入時に異常が起きた場合には、ヒアルロニダーゼを塞栓が疑われたさる血管領域に繰り返し注射します。
ヒアルロン酸注入に限りませんが、美容整形は医師の考え方や技術の差が出やすいです。
必ず医師との信頼関係を結ぶことのできるクリニックを探しましょう。できない事、似合わない事をきちんとアドバイスしてくれる医師と信頼関係を築く方が大きなリスクを避けることに繋がります。
クリニック選び、医師選びも自身できちんと判断し、施術を決めましょう。