ボツリヌス注射について
ボツリヌストキシン注射は非侵襲的で簡単な方法で、幅広い治療に使われています。
1.ボツリヌストキシン注射の適応
・エラを細くするエラボトックス治療
・眉間の縦じわ、額の横じわ、目尻シワ、鼻根部の横じわ
・口角を上げる治療
・ガミースマイル(笑うと歯茎が見える)の治療
・顔面神経麻痺の治療(耳鼻科)
・肩やふくらはぎを細くする治療
・額、顔、脇、手のひら、足裏の汗を止める治療
・顎関節症や歯軋り、噛み締めの治療
といった様々な治療に用いられています。
ボツリヌストキシン注射は優れた治療ですが、その特性からシワが改善したとしても、表情の変化や違和感を感じることがあるため、医師から丁寧な説明を受け、ボツリヌストキシン療法の特性を正しく理解することが大切です。
2.ボツリヌストキシンの作用機序について
ボツリヌストキシン治療は「シワをとる」注射ではなく表情ジワの原因となる筋肉(表情筋)の働きを抑えることでシワが刻まれるのを防ぐ注射です。
また、筋肉を弛緩させることで筋肉に働きによってできるシワやふくらみを軽減させます。
ボツリヌストキシン治療に用いられる製剤は、ボツリヌス菌を作り出すA型ボツリヌス毒素(天然のタンパク質)を有効成分としています。
作用機序
①ボツリヌス毒素(ボツリヌストキシン)注入後、コリン作動性運動神経終末の受容体に結合します。
②受容体に結合したA型ボツリヌス毒素は細胞膜から神経終末内部に取り込まれます。
③取り込まれたA型ボツリヌス毒素がエンドソームから細胞質内へ放出される。
④A型ボツリヌス毒素の軽鎖はタンパク質分解酵素として働き、アセチルコリン放出を阻害する。
⑤A型ボツリヌス毒素により神経筋伝達を阻害される。
⑥時間経過とともに、神経発芽によって、新たな神経筋接合部を形成する。
3.ボツリヌストキシン製剤について
A型ボツリヌストキシン製剤として商品化されている製剤は複数あります。
薬剤によって臨床的に有効な力価な添加物、保存方法、市場価格は異なります。
当院では、製剤の安全性などの観点から厚生省の承認のあるアラガン社製のボトックス®を使用しています。ボトックス®は効果が4-6ヵ月と長く抗体ができにくいのが特徴といわれています。ボトックス®は、日本の厚生労働省から唯一承認を受けているボツリヌストキシン製剤であり、厳格な品質管理だけでなく、有効性や安全性が試験で評価されているので、安心して治療を受けていただけます。
4.ボツリヌストキシン注射施術について
まずは、マーキングを行います。
患者様に表情を動かしてもらい、筋肉の特徴を見極めて注射予定部位にマーキングします。次に、施術部位に対して状態を確認しながら注射を行います。
ボツリヌストキシンはシワをとる製剤ではなく、筋肉を弛緩させる製剤であるため、効果だけでなく、生じ得る問題や治療の限界もあります。一部の表情筋の運動を意図的に制限することは、多少なりとも表情に変化を及ぼします。
また、すでに刻まれたシワや皮膚弛緩を伴うシワへの効果は乏しい場合があります。
ボツリヌストキシンが一旦作用すると、結果が想像と異なっていたとしても一定期間の忍容が必要であったり、想像通りの施術であっても、効果維持のためには再施術が必要なこともあります。
必ず医師の説明を確認し、わからないことがあれば再度聞きましょう。
5.ボツリヌストキシンの効果発現と持続期間
ボツリヌストキシン注射の効果は施術後数日から現れ、1〜4週で最大となります。
当院で使用しているボトックス®は効果が4-6ヵ月と長く抗体ができにくいのが特徴といわれています。
6.ボツリヌストキシンで不自然な表情に?
ボツリヌストキシン注射で表情がなくなった、笑顔が不自然になったという意見がたまにあります。瞼が重くなる、眉毛が吊り上がる、笑顔や表情が不自然になる、喋りにくい、食べにくくなるなどがあります。
ボツリヌストキシン注射は表情筋、皮ふ、シワの深さなどを考え、投与量の調整も個人差があるため難しい施術です。
しかし、適切な投与量で、正しい部位に施術すれば不自然になることはありません。
例えば、眉毛を上げて目を開ける癖がある人の額のシワにボツリヌストキシン注射を打つと、眉毛が下がって目が細くなり人相が悪くなったと感じる場合があります。
眉毛を上げて額にシワを作っている人の額にボトックスは厳禁です。
シワには種類があり、その種類によって合う治療が違います。
ヒアルロン酸注射による施術がよいのか、ボトックス注射が適応か、必ず医師と話し合い、正しい説明とカウンセリングを受けましょう。