シミについて解説します
[2025.03.07]
3月に入り、紫外線量が増えてきました。シミの予防ケアはできていますか?
シミとは、顔に生じた色素沈着のことです。
色素沈着であるメラニンは表皮メラノサイト、真皮メラノサイトなどメラニンを産生する細胞の活性化やメラニンを細胞内に貯留するケラチノサイトや真皮メラノファージの相対的な増加が原因となります。
これらが混在して様々な臨床像を呈するために鑑別は難しく、多くは表皮メラノサイトから産生されるメラニンの増加が主体です。
紫外線はケラチノサイトを介して間接的にメラノサイトを活性化しているため、顔面の多くのシミは紫外線で増悪します。
1.日光黒子
老人性色素斑ともいわれ、40歳以降にみられる日光露出部に生じる境界鮮明な色素斑です。
形は円形〜類円形。色調は淡褐色〜黒褐色斑。大きさもさまざまで、いわゆるシミといわれる色素斑。
日光黒子は長期反復性の紫外線曝露などの影響で表皮ケラチノサイトからの活性化因子によりメラニンの増生を促します。
また、表皮突起の延長によるメラニンの相対的な増加、加齢に伴うケラチノサイトのターンオーバーの低下によりケラチノサイト内のメラニン貯溜なども重なりシミをつくります。
◉日光黒子の治療法
表皮に貯溜したメラニンを破壊、除去する方法と、表皮全体のターンオーバーを更新させる方法があります。第一選択はメラニンをターゲットとしたレーザーで、当院はQスイッチルビーレーザーを採用しています。Qスイッチルビーレーザーはあざの治療などにも用いられます。当院ではドイツ製のレーザーを使用しており、最近ではフラクショナルといったダウンタイムが少ないレーザーも導入しました。
ターンオーバーを更新させる方法としては、ケミカルピーリングやレチノイン酸(レチノール)などがあげられます。
美白剤の外用単独も有用ですが、皮膚への透過性や刺激性などを考慮した上でレーザーなどとの併用療法として選択します。
正しい説明を受け、副作用なども理解した上で信頼できる医師の元で治療を行いましょう。
2.脂漏性角化症(老人性疣贅)
加齢とともに増加する皮膚の良性腫瘍です。上記で説明してしみ(日光黒子)を長期間放置しておくと時間経過とともにどんどん分厚く目立ってくることがあります。時々痒みを伴うことがあり、気になって来院される方が多いです。
◉脂漏性角化症の治療法
炭酸ガスレーザーを用いて、物理的に盛り上がっているところを削り取ります。液体窒素で取るケースもありますが、色素沈着が起こることが多く当院では基本的には行っておりません。
3.雀卵斑(そばかす)
雀の卵の模様に似た色素斑をソバカスと言います。直径2〜3mmの淡褐色の点状色素斑が、両頬から鼻背にかけての日光曝露部に出現します。3歳ごろから始まり、思春期に著明になります。一般的には30歳以降、数が増加することなく次第に消退傾向を示すと言われています。白人に多く、日本人は色白の方に多くみられます。
◉そばかすの治療法
レーザー治療(フラクショナルトーニングが有用)、トランサミンシナールの内服などがあります。メラノサイトが活性化しやすいため、紫外線対策を含め炎症を誘発しないよう日々のケアが大切です。
4.後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
遅発性両側性太田母斑様色素斑、対称性真皮メラノサイトーシス、遅発性真皮メラノサイトーシスなど様々な病名で称されています。
10歳代後半〜30歳代の女性の顔面に左右対称性にみられる茶褐色〜灰褐色斑のことをさします。すこしグレーっぽい色調をしているのが特徴です。
また、肝斑と鑑別が困難な症例や肝斑との合併もよくみられます。
◉ADMの治療法
真皮に存在するメラノサイトが原因であるため、基本的にレーザー治療となりますが治療には回数(3-6回程度)と時間がかかるため根気が必要になります。
5.肝斑
30歳前後から始まる境界不明瞭な対称性のびまん性均一の褐色調地図状色素斑で眼の下あたりによくできるのが特徴です。他にもおでこや頬部にもできることがあります。
表皮基底層のメラノサイト数の増加はありませんが、メラニン産生が亢進しているために発生するシミです。また、増加したメラニン顆粒は、基底層だけでなく、表皮ケラチノサイトの細胞質内にも多くみられることが特徴です。
肝斑は妊娠中、月経不順や経口避妊薬(ピル)の服用で発症、皮膚をこすることで症状が悪化することがあります。60歳を過ぎると改善する方が多く、女性ホルモンと関係があるとも指摘されております。
◉肝斑の治療法
治療の原則は、炎症を惹起しないことです。紫外線曝露や過度の洗顔をやめて、徹底的な紫外線対策やスキンケアが重要です。
具体的な治療法としてビタミンCやトラネキサム酸内服によりメラニンの活性化を抑制させることです。さらにハイドロキノンやレチノールなどの外用剤を組み合わせることもあります。またイオン導入やエレクトロポレーションなども有効といわれており当院では3月から新しい機械としてダーマインフューズというエレクトロポレーション複合機を導入しました。
6.炎症性色素沈着症
様々な炎症性皮膚疾患に続発する色素斑、炎症後色素沈着は〜6ヶ月程度で軽快することが多いとされていますが、長期にわたり遷延する場合もあります。
炎症が軽度で真皮上層に限局している場合には、表皮メラノサイトから生じる炎症性サイトカインによりメラノサイトでのメラニン産生が亢進します。
◉色素沈着の治療法
通常は数ヶ月〜半年程度で自然に改善することが多く、紫外線曝露や過度の刺激などを避けるスキンケアが必要です。毎日の日焼け止めと擦らないスキンケアを心がけましょう。さらにトランサミンやシナールの内服を併用することもあります。