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肥厚性瘢痕・ケロイドについて

けがややけどの傷、手術の傷痕などがミミズ腫れのように盛り上がっている状態を指します。医学的には肥厚性瘢痕とケロイドを区別して用いますが、世間では総じて“ケロイド”といわれることが多いようです。

肥厚性瘢痕・ケロイドとは

傷の治る過程で異常が生じてしまい傷跡が腫瘍性に盛り上がる状態を指します。ケロイドは小さな傷(虫刺され、注射痕、ピアス痕など)からでも発生し、傷の範囲を超えて赤く盛り上がってくる病態を指します。肥厚性瘢痕は外傷や熱傷などによって負った深い傷が盛り上がってくる状態を指し、基本的には傷の範囲を超えないとされています。また、術後の傷が盛り上がってくる(帝王切開の傷など)場合も肥厚性瘢痕であることが多いです。こう記載すると区別は付きそうですが、ときどきケロイドか肥厚性瘢痕か見た目だけでは判断に迷うケースも多く存在します。肥厚性瘢痕かケロイドで治療方針にも影響が出るためわれわれ形成外科医は区別を重視しています。ただ、病態に多少の違いはあってもケロイドも肥厚性瘢痕も同じように痛みや痒みなどの自覚症状を伴うことが多いです。特にケロイドは症状が強く、苦痛を強いられる疾患であるといわれております。

肥厚性瘢痕・ケロイドの原因

人種差(白人はなりにくく有色人種はなりやすい)と体質(ゲノム上に異常があるとの報告あり)、傷への張力(関節部など傷へ常に力がかかる)、アレルギー(体質による)、感染や異物などが要因として挙げられておりますが、まだ分かっていないことも多い分野です。他には傷が治癒するまでの期間が長い(21日以上)場合には肥厚性瘢痕になりやすいと考えられています。

肥厚性瘢痕・ケロイドの治療

治療は保存的療法と外科的療法に大別されます。保存的療法はテープ圧迫や内服などを中心になるべく痛みを伴わない治療から開始していきます。外科的療法では肥厚した瘢痕を切除し、丁寧に皮膚を縫い合わせることで再発を予防します。肥厚性瘢痕では切除を行うことが多いですが、ケロイドの場合は再発の可能性が高いため外科的切除の適応はより慎重になります。ケロイドの治療は場合によってはより専門的で高度な治療が必要となるため、近隣の総合病院などご紹介させて頂く場合があります。

圧迫療法

肥厚性瘢痕ではシリコンゲルやサージカルテープを傷に直接貼付することで局所的な圧迫を行います。傷の範囲が広いときにはサポータを使用したりすることもあります。可能であれば24時間圧迫し続けることが望ましいですが、皮膚かぶれなどのトラブルが起こることもあります。ご自身にあったテープや圧迫材料を探すことも重要です。一緒に最適で継続しやすい方法を考えながら治療を行っていきます。

トラニスト内服

リザベンカプセル®(トラニス)は抗アレルギー剤に分類され、ケロイド・肥厚性瘢痕に対して保険適応のある飲み薬になります。この薬は肥満細胞(アレルギーに関与する細胞)からのケミカルメディエーターを抑制し、余分なコラーゲン(瘢痕)の生成を抑え、かゆみなどんも自覚症状改善にも効果があるといわれております。1日3回食後に内服をして頂きますが、副作用として肝機能障害や膀胱炎症状(頻尿、排尿時痛、血尿など)が出やすいといわれております。内服をされる方には採血をして副作用が出ていないかモニタリングする必要があります。内服の期間ですが、明確な基準はありません。すぐに効果が認めらるわけでもないので1年以上内服されている患者様もおられます。副作用が出現したりすれば中断せざるを得ないですが、内服ができる場合は少なくとも6ヵ月程度内服して頂くようお話しております。

漢方薬

柴苓湯は12の生薬からなり、抗炎症作用や線維芽細胞増殖抑制作用がありケロイド・肥厚性瘢痕にトラニストと同等レベルの効果があるといわれております。漢方薬は比較的安全なイメージがありますが、間質性肺炎や偽アルドステロン症といった重篤な副作用の報告があり必ずしも100%安全というわけではありません。また、漢方薬は保険適応外になるためコストがかかってしまいます。トラニスト内服で副作用が出現した場合や効果に乏しいときなどに当院では使用しております。

ステロイド療法

ステロイドは塗り薬(外用剤)、テープ(貼付材)、注射薬を使用します。外用剤やテープは痒みや赤み、盛り上がりが軽度~中等度の症状に対して有効です。副作用も少なく、比較的安全に使用できます。注射薬はトリアムシノロン(ケナコルト®)を局所麻酔薬と混合して使用します。肥厚性瘢痕やケロイドに直接注射して注入するので少し痛みを伴いますが、痒みや痛みなどの自覚症状に対して高い有効性を示します。ただ、体内に直接注入するため皮膚の菲薄化や毛細血管拡張といった副作用が出現することがあり、皮膚の状態を観察しながら投与を行っていきます。

外科的療法

盛り上がった瘢痕を切除して縫合を行うだけでは再発することがあります。そこでZ形成やW形成(別の項を参照)を組み合わせて、傷の緊張を様々な方向に分散させてあげることが重要です。また、瘢痕の切除で生じた欠損が大きい場合には皮膚移植や皮弁などを組み合わせて治療を行います。ケロイドの場合は放射線療法と組み合わせることが再発予防において重要であるといわれております。術後はさらにテープ圧迫や内服などの後療法が重要になってきます。

 

 

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