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やけど(熱傷)の対応と治療

やけど(熱傷)について

やけど(熱傷)は熱、放射線、ならびに化学的または電気的接触による皮膚およびその他組織の損傷と定義され、日常生活の中でも遭遇することが多い疾患です。最近では電化製品などの普及で重症なやけどは減少してきている印象にはありますが、それでもお子さまや高齢者のやけどは後を絶ちません。ラーメンやみそ汁などの液体によるやけどや冬場はあんかやストーブによるやけど(低温熱傷)が多い印象にあります。また、糖尿病や膠原病など基礎疾患がある場合には重症化しやすく、注意が必要です。やけどは深さと範囲で重症度が決ります。

やけど(熱傷)の重症度について

やけどは深さと面積で治療方針を決めていきます。

深さは温度と接触時間に依存しています。どういった受傷機転(液体なのか固形物なのか、すぐに冷やしたかなど)でやけどをしたのかも非常に重要になってきます。

やけどの深さによる分類

Ⅰ度熱傷 

表皮を中心としたやけどで赤くひりひり痛むのが特徴です。数日で軽快することがほとんどです。

Ⅱ度熱傷 

真皮に達するやけどで、さらにⅡ度は2種類に分類されます(Ⅱ度SDB、Ⅱ度DDB)。Ⅱ度熱傷の場合は水ぶくれ(水泡)が形成され、水泡の下の皮膚の色調で判断します。

  1. Ⅱ度SDBの場合は水泡の下の皮膚はピンク色を呈します。痛みを自覚し、適切な処置を行えば2週間以内に治癒します。

  2. Ⅱ度DDBの場合は水泡の下の皮膚は白色を呈します。痛みをあまり感じず、治療には①より時間がかかります。

Ⅲ度熱傷 

皮膚の全層が壊死するやけどで、治療には外科的処置を要する場合もあります。痛みをほとんど感じないのが特徴です。

やけどは深いほど重症度が高く、治療に時間を要します。治療に2週間以上かかってくると瘢痕(きずあと)が目立ったり、拘縮(ひきつれ)が起こる可能性が高くなります。また、やけどによって損傷した皮膚が壊死し、適切な処置を行わないと細菌感染を起こすこともあります。

やけどの面積による分類

熱傷面積も重症度を決定するのに重要な要素になります。

成人:9の法則

小児:5の法則

簡便な方法:手掌の大きさを1%とし、大体の熱傷面積を予測します。

熱傷面積がⅡ度15%以上、Ⅲ度10%以上の場合には入院治療が必要になることがあります。ただ、面積が小さくても患者様の全身状態、社会背景(独居で処置ができない、通院が困難など)によっては入院をすすめさせて頂く場合があります。入院加療は近隣施設をご紹介させて頂きます。

やけど(熱傷)の対応と治療

応急処置、自己処置について

やけどした場合にはまず冷やすことで蓄積した熱エネルギーを逃がしてやることが重要です。小範囲であれば水道水、下腿や大腿など広範囲になればシャワーで冷やすのがよいでしょう。冷やす時間は5分~30分程度を目安にして下さい。ただし、お子様や高齢者の方ではあまり冷やしすぎると低体温になるため注意して下さい。その後、タオルなどでやけどした部分を保護してから来院するようにして下さい。水ぶくれ(水泡)が形成されていて破れることがありますので擦り付けいないようにして下さい。また、やけどした部分は腫れるので、アクセサリーなど貴金属類やストッキングは外して下さい。

病院への来院をすすめるやけど

小範囲のやけどであれば慌てて来院する必要はありません。お子様やご高齢の方、大きな水ぶくれができたやけど、化学薬品やお湯が広範囲にかかった等の場合はできるだけ早い来院をすすめます。ただ、できるだけ早めに流水等で冷やすことが重要ですので、上記(応急処置)のように十分冷やしてからの受診が望ましいと思われます。また、以前にやけどを負った傷が治らない、ジュクジュクしているなど難治性になった場合などもお早目の来院をすすめております。

病院での処置

やけどは深さによって処置が異なってきますが、急性期はやけどした部分を乾燥させないことが重要になります。また、やけどの面積が広く、皮膚の表面が失われ浸出液が多い場合には点滴で補液を行う管理が必要になります。ただ、やけども外傷と同じで毎日石鹸を用いてやけど部分をきれいに洗浄することが重要です。そうすることで余計な浸出液や細菌を除去することができ、治癒を促進することができます。

軟膏処置(塗り薬の治療)

様々な軟膏が存在し、医師によって使う種類が多少異なりますが、“浸潤環境”を維持するためにワセリン基材の軟膏を初期に使用することが多いです。痛みやヒリヒリ感などが強い場合にはステロイドが配合された軟膏を使用することがあります。ステロイドの使用は短期間に留めることでそれに伴う副作用の出現頻度も少ないと思われ安全に使用できます。やけどが深く、皮膚などの組織が壊死に至ることが予測される場合には感染予防のために抗菌作用のある軟膏を使用する場合もあります。傷の状態は刻々と変化していくので状況に応じて軟膏や処置内容を変更していくことが必要になってきます。

創傷被覆材

Ⅱ度・Ⅲ度熱傷においては創傷被覆材も治療に用いられています。創傷被覆材はフォーム材、ファイバー材、コロイド材に分けられ、傷の浸出液の多さを目安に使い分けを行います。また、抗菌作用を有する銀含有の製品も発売されておりおります。創傷被覆材は貼るだけで“浸潤環境”を整え、毎日の交換を要さないため患者様の負担を減らすことが可能になります。ただ、やけどの範囲や浸出液が多い急性期の処置には不向きなこともあり、使用に関してはやや適応を選びます。上手く使えると非常に有用な材料であることは間違いありません。

bFGF(成長因子)

bFGF(トラフェルミン)は遺伝子組換えヒト線維芽細胞成長因子(FGF)を含んだ治療薬です。血管新生、肉芽形成作用などがあり、傷の回復を促してくれる作用があります。この製剤の登場でやけど治療も大幅に改善されたといっても過言ではありません。Ⅱ度熱傷以上の処置に用いることで治療期間を短縮することができるといわれております。基本的には軟膏治療や創傷被覆材などと組み合わせて使用します。

手術

やけどはⅡ度DDB、Ⅲ度に達する場合には皮膚が壊死し、治癒を阻害します。そのため壊死した組織を元気な回復力がある組織が出てくるまで切除(デブリードマン)することが必要になります。広範囲であれば全身麻酔が必要になることもあります。小範囲であれば外来で皮膚移植を行うこともできます。やけどは治療に時間がかかると肥厚性瘢痕(傷跡が目立つ)になったり、部位によっては関節拘縮を来すことがあります。小さいお子様の場合、関節拘縮が残ると成長に影響が出るため早い段階で手術が必要になることがあります。やけどで重要なのは手術が必要かどうか適切な判断を下せるかということになります。

安静

やけどした部分は安静が必要になります。腕のやけどであれば三角巾をしたり、下腿であればシーネをすることがあります。特に下腿では無理に歩行するとやけどが悪化することがあります。できるだけ安静を心がけるようにして下さい。

通院、処置について

やけどの範囲や深さによって判断していきます。先述したように重要なのは毎日の洗浄です。自宅でシャワーが可能であり、軟膏を塗布することができるなら自宅処置をすすめています。ただ、やけどが深く感染などが起こりそうな場合は頻回通院が必要になります。やけどの面積が広い場合や手術が必要な場合には近隣施設をご紹介させて頂きます。

やけどの傷あと

やけどは治療に時間がかかると瘢痕化し、傷が目立ちやすくなります。そのため適切な治療を行い、上皮化を促進させることが重要です。傷が治ってからも遮光や保湿を行うことで傷跡が目立ち難くなることがあるのでアフターケアも重要になってきます。

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