陥没乳頭
陥没乳頭とは、乳頭(ちくび)が周囲の皮膚よりも内側に引き込まれ、埋もれてしまっている状態を指します。この症状は、見た目のコンプレックスだけでなく、授乳が困難になったり、陥没した部分に汚れが溜まって乳腺炎などの感染症を引き起こしたりするなど、機能面や衛生面でも多くの問題を抱えています。広島市安佐南区のわかば皮ふ形成クリニックでは、形成外科専門医および指導医である院長が、お一人おひとりの症状やライフステージに合わせた最適な治療法をご提案します。当院はJR下祇園駅より徒歩5分という便利な立地にあり、日帰り手術にも力を入れている皮ふの外科専門施設です。長年ひとりで悩んできた方も、どうぞ安心してお気軽にご相談ください。
陥没乳頭の症状について
陥没乳頭の症状は、単に見た目の問題にとどまりません。日常生活や将来のライフイベントにおいて、以下のようなさまざまな困りごとが生じる可能性があります。
衛生的な問題と感染症のリスク
乳頭が陥没していると、その隙間に皮脂や埃などが「乳垢(にゅうこう)」として溜まりやすくなります。これをご自身でケアしようとして傷つけてしまうと、細菌が侵入して乳腺炎や乳輪下膿瘍(にゅうりんかのうよう)という強い痛みや腫れを伴う病気を引き起こすことがあります。不潔になりやすい環境が、皮膚トラブルの引き金になるケースは少なくありません。
授乳への影響
将来的に出産を希望されている方にとって、授乳のしにくさは大きな懸念点です。赤ちゃんが乳頭をうまく吸い付くことができないため、母乳育児が困難になる場合があります。重度の場合は、乳管が十分に発達していないことも多く、機能的な改善が必要となります。当院では将来の授乳を見据えた治療に注力しています。
精神的なコンプレックス
温泉やスポーツジムの更衣室などで、人目が気になってしまうという悩みも多く寄せられます。誰にも相談できず、長年ひとりで抱え込んでいる方もいらっしゃいますが、陥没乳頭は形成外科的な治療で改善が期待できる疾患です。当院では患者さんのプライバシーに配慮した診療を行っております。
陥没乳頭の原因について
陥没乳頭の原因は、大きく分けて「先天性(生まれつき)」と「後天性(成長後)」の2つのパターンがあります。
先天的な原因
多くの場合は、生まれつき乳頭を支える組織の成長が不十分であることが原因です。具体的には、乳管(お乳を運ぶ管)が短かったり、乳頭を外に押し出すための皮下組織が不足していたりすることで、乳頭が内側に引き込まれたまま定着してしまいます。乳管の周囲にある線維組織が硬くなり、乳頭を強く束縛している状態です。
後天的な原因
成長してから症状が現れる場合、乳腺炎などの炎症によって組織が硬くなったり(瘢痕化)、乳管が縮んだりすることが原因となります。また、まれに乳がんの症状として乳頭が引き込まれることもあります。急激に陥没が進んだ場合などは、背景に重大な病気が隠れていないか慎重に診断する必要があります。気になる変化を感じたら、早めの受診をお勧めします。
陥没乳頭の病気の種類について
陥没乳頭はその重症度によって、一般的に「Han(ハン)らの分類」に基づいた3つのグレードに分けられます。ご自身の状態がどこに当てはまるかを確認することが、治療方針を決める第一歩となります。
グレード1(軽症)
指でつまみ出したり、寒さや性的刺激などの刺激を与えたりすることで、乳頭が容易に突出する状態です。突出した状態がしばらく維持されることもあります。この段階では、セルフケアや吸引器による保存的治療で改善する可能性があります。
グレード2(中等症)
刺激を与えることで乳頭を出すことはできますが、指を離すとすぐに元に戻ってしまう状態です。あるいは、引き出す際に少し抵抗を感じることもあります。機能面や衛生面での問題が出始める段階であり、手術を検討される方が増えるグレードです。
グレード3(重症)
どのような刺激を与えても乳頭が全く出てこない、あるいは非常に強い力で牽引してもわずかしか反応しない状態です。乳管の短縮や周囲組織の癒着が強いため、保存的治療での改善は難しく、根本的な解決には外科的手術が必要となります。
陥没乳頭の治療法について
わかば皮ふ形成クリニックでは、患者さんの年齢や将来の授乳希望の有無に合わせて、適切な治療法を選択します。当院では特に日帰り手術に力を入れており、機能と見た目の両立を目指しています。
保存的治療(非手術的療法)
グレードが低い場合に検討される方法です。市販の吸引器やシリンジを用いて、物理的に乳頭を外側へ引き出す訓練を継続します。長期間続ける必要がありますが、侵襲(体への負担)が少ないのが特徴です。ただし、重度の場合は効果が限定的です。
乳管温存法(酒井法など)
将来、授乳をする可能性がある方に適した手術法です。乳頭の付け根に小さな切開を加え、乳頭を引き込んでいる硬い組織(瘢痕組織)を丁寧に剥離して束縛を解除します。当院では日本形成外科学会認定の形成外科専門医が、乳管を傷つけないよう細心の注意を払って施術を行います。再発を防ぐために、真皮弁という自身の組織を乳頭の下に敷き込み、土台を作る工夫をすることもあります。
乳管切離法
授乳の予定がない方や、再発を繰り返す重度の陥没乳頭に適した手術法です。引き込みの原因となっている乳管そのものを切離することで、乳頭を確実に突出させます。授乳機能は失われますが、形状の維持という点では非常に安定した結果が得られやすい方法です。乳頭の形をきれいに整えたい場合に選択されます。
手術の詳細については「日帰り手術について」のページもあわせて参照してください。
手術に伴う合併症とアフターケア
どのような手術にも一定のリスクが存在します。私たちは、起こりうる合併症について事前に入念な説明を行い、患者さんの不安を取り除くことに努めています。
考えられる合併症
- 術後の出血や血腫(血が溜まること)
- 創部(傷口)の感染
- 一時的な感覚鈍麻(しびれ感)
- 瘢痕拘縮(傷跡が硬くなること)による再陥没
- 局所麻酔によるアレルギー反応
合併症に関するより詳しい情報は「手術に伴う合併症について」のページをご覧ください。
術後の再発防止に向けた取り組み
陥没乳頭の手術で最も課題となるのが「再発」です。切った組織が治ろうとする力で再び内側へ引き込まれてしまうことがあります。当院では、術後に糸で乳頭を外側へ吊り上げて固定する牽引(けんいん)を2週間から4週間程度行ってもらうことで、後戻りを防ぐアフターケアを徹底しています。この細かなケアが、良好な予後(経過)を保つために非常に重要です。
料金について
陥没乳頭の手術は、状態によって保険適応になる場合と、自由診療(自費)になる場合があります。当院では初診時にしっかりと診断し、費用についても明確にご提示いたします。
保険適応となる目安
将来的に出産・授乳を希望されている方、あるいは陥没により乳腺炎などの機能障害を繰り返している方が対象となります。40歳未満の方や、医師が機能的な治療が必要と判断した場合は保険が適応されます。
自費診療(美容目的)となる場合
授乳機能に問題がなく、純粋に見た目の改善のみを目的とする場合は自費診療となります。また、乳輪の形を整えたいなどの追加のご要望がある場合も自由診療の範囲となります。
乳頭全体のデザインやサイズ調整をご希望の方は「乳輪・乳頭縮小」のページも参考にしてください。
| 項目 | 費用の目安(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| 保険診療(3割負担) | 約20,000円 .. 40,000円程度 | 片側・両側や処置内容により変動します。別途お薬代等。 |
| 自費診療(片側) | 140,000円 | 麻酔代、診察代を含む |
| 自費診療(両側) | 248,000円 | 麻酔代、診察代を含む |
陥没乳頭についてのよくある質問
Q1. 手術は痛いですか?
A1. 手術は局所麻酔を行ってから進めますので、術中に強い痛みを感じることはほとんどありません。麻酔の注射をする際にチクッとした痛みがありますが、極細の針を使用するなど負担を軽減する工夫をしています。術後、麻酔が切れた後に重だるい痛みが出ることがありますが、痛み止めを処方しますのでコントロールが可能です。
Q2. 傷跡は目立ちますか?
A2. 乳頭と乳輪の境界線や、乳頭そのものの凹凸に合わせて切開を工夫します。術後しばらくは赤みがありますが、時間とともに馴染んでいき、最終的な傷跡はほとんど目立たなくなることが多いです。私たちは形成外科の技術を駆使し、できるだけ美しい仕上がりを目指しています。
Q3. 入院は必要ですか?
A3. 当院ではすべて日帰り手術で行っております。入院の必要はありません。手術時間は両側でおおよそ1時間程度です。術後は少しお休みいただいてから、歩いてお帰りいただけます。お仕事や育児で忙しい方でも受けていただきやすい体制を整えています。
Q4. 授乳ができなくなることはありますか?
A4. 授乳を希望される患者さんには、乳管を極力傷つけない「乳管温存法」を選択します。これにより授乳機能を維持することが可能です。ただし、もともとの乳管の発育が非常に悪い場合などは、100パーセントの授乳機能を保証できるわけではありません。診察時に詳しく状態を確認させていただきます。
Q5. 再発することはありますか?
A5. 残念ながら、陥没乳頭は再発のリスクがある手術の一つです。そのため当院では、術後の牽引療法を非常に重視しています。医師の指示通りにアフターケアを行っていただくことが、再発を防ぐ鍵となります。万が一後戻りが見られた場合も、しっかりとフォローさせていただきます。
院長より
乳頭のお悩みは非常にデリケートなものであり、家族や友人にも相談できずに「自分だけがおかしいのではないか」と悩まれている方が少なくありません。しかし、形成外科という視点で見れば、陥没乳頭は適切な処置によって改善が可能な立派な「疾患」です。私は形成外科専門医として、長年がんセンターなどで培ってきた「再建外科」の技術を、現在は皆さんの健やかな生活を取り戻すための「再健外科」として提供しています。広島市安佐南区の地域の皆さんが、少しでも早くコンプレックスや機能的な不安から解放されるようお手伝いをするのが私の使命です。当院では皮膚科や美容皮膚科のスタッフとも連携し、皮膚のお悩みをトータルで解決できる環境を整えています。約10分ほどの診察で、治療の方向性や料金、期間についての目途を立てることができます。下祇園駅から徒歩5分の便利な場所にありますので、まずは一度、お気軽に診察へお越しください。私たちが一歩踏み出す勇気を全力でサポートいたします。
形成外科診療の考え方については「当院の形成外科」のページもご覧ください。
文責 形成外科専門医 江草豪

