光治療機器 IPLについて解説します
[2025.06.18]
●光による若返り治療って?
IPLという光治療によって、色素・血管性病変の改善、小ジワ・毛孔開大・皮膚の弾力改善などの皮膚老化の症状を改善することができます。
IPLとは、もともと血管腫治療器として開発されましたが、顔面全体に照射することで紫外線暴露により生じた光老化(シミ・毛細血管拡張・毛孔開大)を改善させるフォトフェイシャルとしても効果があると発表されました。
熱緩和時間より長い照射時間と広域波長がもたらすメラニン・酸化ヘモグロビンへの吸収はその拡散熱により真皮に微小損傷を起こし、修復課程で新生コラーゲンを誘導させる理論に基づいています。照射対象は全顔で、治療後に処置のいらない非侵襲的治療の先駆けです。先ほどお伝えしたように、IPLはシミのみの治療にとどまらず、様々な皮膚コンディションを改善することができます。
当院でも2025年7月半ばにルミナス・ビー・ジャパン社製IPL機器 ステラM22(厚生局認可機器)を導入することにしました。
①IPLの特徴について
IPLは単波長レーザー機器とは異なり、515nm〜1200nmの非干渉性の光をフラッシュランプにより照射する機器です。
フィルターの変更によってピーク波長を選択でき、それより短波長の光をカットして長波長の領域は照射されるようになっています。
照射面積も大きいものから小さいヘッドまでさまざまで治療対象の大きさに応じて選択可能です。
設定した照射出力を変更することで、2〜3回に分けて照射することで表皮温度を上昇させすぎないことが可能でダウンタイムの少ない治療が可能です。
②作用機序
IPLの作用機序は、選択的光熱溶解論と組織の加熱作用があります。
光熱溶解論とは、ターゲットとなるchromophoreが吸収する波長を発振することで、吸収された光が熱エネルギーに変換され、その放熱効果によりchromophoreは熱損傷を受けて周辺組織にも熱影響が加わります。
熱影響によって真皮に微細損傷が生じて、その修復課程でコラーゲン・エラスチンの増生が得ることができ肌質改善、小ジワが改善すると考えられています。
また、IPL照射後の熱変性後に生じるターンオーバーによって老人性色素斑の色調の改善が得られます。メラニンは短波長ほど効率よく熱影響が得られる、515nm、560nmフィルターを用い、酒さや加齢による毛細血管拡張による紅斑には、ヘモグロビンの吸収ピークである542nm、577nmを含む波長帯を十分な割合で発振するフィルターを用います。
加齢皮膚への複数回のIPL照射により、皮膚のRNAプロセスや転写を司る遺伝子発現パターンの若返りが確認されたとの報告もあり、定期的なIPL照射により高いアンチエイジング効果が期待できます。これ以外にもコラーゲンの新生・再構築により、肌理(きめ)・毛孔開大・毛細血管拡張の改善にも効果が認められています。
③Qスイッチルビーレーザーとの違い
当院ではQスイッチルビーレーザーを用いたシミ治療を多く行ってまいりました。今回導入するIPLとの違いが分かりにくいとのことで少し違いをお話しします。
まずQスイッチルビーレーザーは色が黒いシミに対して主に反応するため赤みなどには効果がありません。一方IPLは様々な波長を組み合わせるので黒いシミだけではなく赤みなどに幅広い効果がありますが、Qスイッチルビーレーザーほどの破壊力がないため治療に時間と回数がかかったりすることがあります。お顔にある10円玉がはりついたような目立つシミにはQスイッチルビーレーザーを使用し、薄いシミが広範囲にあったり赤みや小じわなどお肌のお悩みの範囲が多い場合にはIPLを使用するといった使い分けを行っております。
④赤ら顔の光治療について
顔の赤みのご相談はシミやシワなどに次いで多く、赤ら顔をきたす疾患は多岐に渡ります。
現在まで当院には赤みに対する治療は酒さに準じてロゼックスゲルやアゼライン酸を用いて治療を行うことが多く、レーザーでの対応は行っておりませんでした。ただ非常にお悩みの方も多く少しでも改善のお手伝いをしたいとの想いで今回このステラM22を導入することにしました。ステラM22にはさまざまなフィルターが付属しており特に590nm615nmが赤みに対して有効とされております。
赤ら顔をきたす疾患は、化粧品や毛染めによる接触皮膚炎やアトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎に代表される湿疹、皮膚炎群、酒さやニキビなどの皮膚付属器系炎症性疾患、SLEなどの膠原病、閉経期のホットフラッシュ、花粉症を伴う花粉皮膚炎などが挙げられます。
これらの原因が複数合併していることもあるため、患者様の既往歴や使用薬剤、臨床経過を詳細に診察する必要もあり、病態に合わせた治療方法を選択することが重要ですが、一般的な治療で改善できない難治性酒さや痤瘡・痤瘡後の炎症性紅斑に対してIPL治療を行います。ただし、血管病変に対するIPL治療は色素性病変と比較すると回数がかかる傾向にあるので、担当医から詳しく説明を聞いてから治療を行うようにしていきましょう。
⑤IPLの副作用
熱傷、炎症後色素沈着、毛包炎、肝斑の顕在化・悪化があります。
もしも熱傷が生じた場合はクーリングやステロイド外用を開始して上皮化後、ハイドロキノンなどの美白剤外用と紫外線対策を行います。
光治療(IPL)を併用する場合は時間と回数がかかることや再発の可能性についてもきちんと説明を受けてから治療を行っていきましょう。当院には形成外科皮膚科の専門医が在籍しており安心して美容治療が行える環境や情報提供を行っておりますのでご不明な点があればなんでも聞いて下さい。
文責
わかば皮ふ形成クリニック
院長 江草豪
(日本形成外科学会認定 形成外科専門医/指導医)