ニキビ治療の切り札 アクネトレントについて
ニキビ治療の切り札?
アクネトレント(イソトレチノイン)でニキビが治る?
※アクネトレントは催奇形成の恐れがあり妊婦には禁忌です。
夏になり、汗をかく日々が続きますね。
汗をかくと気になるのはニキビの悪化やあせも、とびひなどの夏の皮膚症状です。
最近話題になっている「アクネトレント(イソトレチノイン)」という飲み薬をご存じでしょうか?
日本未承認(自費診療)の難治性ニキビの治療薬です。
治療効果が高い反面、副作用や妊婦に禁忌など注意点もあります。
今日はニキビについて、そしてアクネトレントについて詳しくお話ししたいと思います。
目次
1.ニキビってなに
2.思春期ニキビと大人ニキビの違いについて
3.ニキビ治療について
4.ニキビのスキンケア
4.アクネトレントの効果
5.アクネトレントの注意点
1.ニキビ(痤瘡)ってなに?
敏感肌のひとつで、顔に赤く目立ってできるニキビ(痤瘡)は、かなり古い時代から私たちを悩ませてきた皮膚疾患です。
ニキビは脂腺性毛包にできるもので終毛性毛包や軟毛性毛包にできる毛嚢炎やおできとは異なります。
脂腺性毛包は顔面、頸部、前胸部、上背部に存在します。毛が生毛のように未発達で細くて短く毛包上皮も薄いけれど、脂腺は大きく多いのが特徴です。
このような毛包であるために皮脂が詰まりやすく、毛包内のアクネ菌や表皮ブドウ球菌が増殖し炎症が起こると、毛包上皮が薄いため炎症が周囲に拡大しやすくなります。
ニキビは、毛穴の詰まり→毛包の皮脂貯留→炎症→毛包壁破壊→瘢痕という経過をたどります。
一般のニキビはその経過により、
①白ニキビ、②黒ニキビ、③赤ニキビ、
④黄ニキビ、⑤ニキビ痕に分類されます。
初期段階の皮脂貯留期では
白ニキビ(毛穴が閉じた小さな白い点)と黒ニキビ(白ニキビに毛穴が開いて皮脂が黒く見える)がみられ、
炎症期になると赤ニキビ(赤い丘疹)になり、さらに炎症が強くなると黄ニキビ(赤ニキビの頂点に黄色い膿をもつ)になります。
毛包壁が破壊され炎症が周囲に及ぶと症状はさらに強くなり、最終的にはニキビ痕(瘢痕やケロイド)となります。
2.思春期ニキビと大人ニキビの違いについて
思春期ニキビは、毛包が未熟な子どもから大人への成熟過程で、皮膚と内分泌の成熟にズレが生じたときに皮脂が詰まって生じます。
そのため皮膚の成熟が完了すれば治ります。大人ニキビは20歳前後から、脂漏性素因をもつ人に生じます。不規則な生活が誘因となり、副腎由来のホルモン(ジヒドロテストロン)の増加による毛漏斗部の角化亢進(毛穴の詰まり)と皮脂腺の機能亢進が関与します。
その結果、毛包に皮脂が貯留してニキビができる。すなわち、体調が悪いときにできるニキビは健康のバロメーターとも言えるのです。
3.ニキビの薬物治療方法について
ニキビ治療のゴールは、
①今あるニキビを早く治す
②ニキビ痕を残さない
③新しいニキビができないようにする ことです。
ニキビ治療の基本は
①薬物療法を中心とした治療
②スキンケア
③生活指導 の3つからなります。
ニキビをただちに治す魔法の治療法はなく、長く付き合うことを理解することが大切で、そのためスキンケアなどのセルフケアがとても重要です。
まず、薬物療法を中心とした治療法についてお話しします。
医療機関では薬物療法のほか、コメド圧出、ケミカルピーリング、イオン導入、フォトフェイシャル、各種レーザー治療などを選択あるいは組み合わせて治療します。
また、漢方薬(十味敗毒湯、黄連解毒湯など)を組み合わせる治療も行われています。
具体的にまとめると以下のようになります。
*当院ではケミカルピーリング、ホルモン療法はしておりません。
◎毛孔の閉塞(毛孔角化亢進)
外用薬【ディフェリンゲル(アダパレン)、べピオゲル(過酸化ベンゾイル)、レチノイド、角質溶解剤】
内服薬(ビタミンA)、ケミカルピーリング
◎皮脂の貯留
洗浄剤(ニキビ用石鹸)、ケミカルピーリング
◎皮脂分泌増加
外用薬(レチノイド)
内服薬(ビタミンB2、ビタミンB6)
◎ホルモン異常
内服薬(経口避妊薬、スピノロラクトン)
◎アクネ菌・表皮ブドウ球菌
外用薬【べピオゲル(過酸化ベンゾイル)、ナジフロキサシン、クリンダマイシン、オゼノキサシン】
内服薬【テトラサイクリン系、ニューマクロライド系】、ケミカルピーリング
◎ニキビ痕
外用薬(保湿剤、ベピオゲル・エピデュオゲルも軽度の瘢痕には効果があるといわれてます)
ダーマペン、ケミカルピーリング(ビタミンCのイオン導入併用が効果的)
4.ニキビのスキンケア
ニキビのスキンケアで大切なことは、ニキビができにくい肌環境に整えることです。
つまり、肌を清潔にし(洗浄)、潤いを与え(保湿)、紫外線から守り(遮光)、美しく装う(メイク)ことです。
ニキビのスキンケアで使用する化粧品は、ニキビができにくいことを確認してある『ノンコメドジェニックテスト済み』との記載があるものを選びましょう。
さらに、ニキビの原因となるアクネ菌・皮脂・毛穴の詰まりなどを考慮したニキビ用化粧品も市販されています。
当院ではクリニック専売品の『DRX AZA クリア(アゼライン酸)』を推奨しています。
しかし、どのような化粧品も自己流の使い方では十分な効果が得られないので、使用する手順や使用量などを守ることが大切です。
①洗浄のスキンケア
ニキビ肌のスキンケアの基本は洗浄です。
過剰な皮脂や洗い残した化粧品などは、刺激の少ない固形石鹸をぬるめのお湯と泡立てネットで泡立てて、やさしく洗うことが大切です。
皮脂の多いニキビ肌だからといって、洗浄力の強い洗顔料で過剰に皮脂を取りすぎると肌のバリアを壊すだけでなく、さらに皮脂の分泌を促しかねません。
ニキビ肌でも洗顔は1日2回が適当とされています。
②保湿のスキンケア
皮脂の多いニキビ肌でも保湿が大切です。
適度な保湿をすることで肌環境が整い、過剰な皮脂もコントロールできます。また、ニキビ痕にも効果的です。
ノンコメドジェニックテスト済みで、アクネ菌の栄養源になりにくい成分を使用している保湿剤がおすすめです。
③遮光のスキンケア
ニキビ肌でも遮光のスキンケアは大切です。紫外線が肌を痛めニキビ肌のリスクとなります。
ニキビによる炎症があると、紫外線が色素沈着やニキビ痕などの原因をつくることも多いです。
また、日焼けにより肌のターンオーバーが亢進すると肌が乾燥し、皮脂の過剰分泌を招き、新たなニキビが生じる可能性もあります。
日焼け止めは、紫外線散乱剤を用いたものや、オイルフリーのものがおすすめです。
④スキンケアとしてのメイク
メイクはニキビやニキビ痕を目立たなくさせ、ストレスを軽減する効果だけでなく、肌や乾燥、紫外線などの刺激から守る効果があります。
また、ニキビをさわったり、つぶしたりしなくなるという効果もあります。メイクアップ化粧品はニキビ肌向けの低刺激性のものを選びましょう。
5.アクネトレント(イソトレチノイン)の効果
アクネトレントはイソトレチノインというビタミンAの一種で、皮脂の分泌を抑える作用、アクネ菌に対する抗菌作用、抗炎症作用に優れているため、重症の炎症性ニキビに対して効果があります。日本では厚生労働省の認可がおりてないため、保険が適応されていませんが、欧米ではニキビ治療に必要不可欠な薬剤として認知され、20年以上の歴史を持つ「ニキビ治療の切り札」とも言われています。
効果としては、重度のニキビ、しこりニキビ、酒さ(赤み)、毛穴のひらき・黒ずみ、皮脂抑制などがあります。
難治性ニキビの方や、一般的ニキビ治療では治療が困難であった方が対象となります。
1日1回20mg(1錠)を内服し、効果や副作用をみながら治療を行い、短期間では効果が得られない可能性もあるため4〜6ヶ月の内服を推奨しています。
6.アクネトレントの注意点
①妊婦、授乳婦、妊活中の方は内服できません。
妊娠中の女性が服用した場合に、胎児への催奇形性のおそれがあるため、米国食品医薬品局(FDA)では、インターネットや個人輸入により入手することのないよう、厚生労働省より注意喚起を行っています。胎児への重大な催奇形性があるため、妊娠している人、妊娠予定のある人、または服用期間中に妊娠する可能性のある人は服用できません。
*服用期間中とその前後1ヶ月間に性行為をする場合は、必ず避妊を行ってください。服用期間中とその後1ヶ月間は妊娠、授乳、献血をしないでください。
②副作用
アクネトレントはビタミンAの一種であり、皮膚の乾燥や赤み、口鼻眼の乾燥、ニキビの一時的な悪化などの副作用が起こりやすいです。
内服時は保湿などのセルフケアをしっかりと行いましょう。また、アナフィラキシー、抑うつ状態、眼疾患、肝機能障害、腎機能障害、視力障害、胸の圧迫感、息切れ、喘鳴、肌の乾燥(特に口周囲)、口渇、発疹、頭痛、吐き気、下痢、嘔吐、脱毛、過度の発汗、関節炎などが生じることがあります。
※皮膚や粘膜の乾燥症状以外はかなり稀な副作用です
③飲み合わせに注意が必要
頭蓋内圧亢進による頭痛の副作用がでる可能性があり、ミノマイシン・ビブラマイシン等のテトラサイクリン系の抗生物質との内服併用はできません。 また、光・レーザー・ピーリングは内服期間中と治療後1か月は併用禁止です。
*当院ではアクネトレントをご使用前に必ず説明、同意書にサインをしていただき、ご納得いただいた上で治療を始めます。
また、16歳以上の方からご使用いただけますが、未成年の方は保護者の方とご一緒にご来院いただくようお願い致します。
上記の通り、慎重に使用しなければいけない薬剤ですが、アクネトレントは非常に高い治療効果が見込まれます。
ぜひ一度ご相談ください。