メニュー

しみについて再度解説します

[2025.06.20]
夏になり日差しが強くなる時期です。当院ではシミ治療を希望されて来院される方が増えてきております。さてここではシミについて解説をしていきます。 よく別の病院で肝斑なのかシミなのか分からないと言われたという相談をお受けします。確かにシミと肝斑は一体何が違うのでしょうか? そもそもシミとは何でしょうか?顔や手にある黒い円形の斑を想像する方もいればくすみのようなものもシミと考える方もいます。厳密にいうとシミには5種類あり、日光黒子、肝斑、後天性真皮メラノーシス、雀卵斑(そばかす)、炎症性色素沈着(PIH)が該当します。特に日光黒子と肝斑の相談が圧倒的に多く、今回はこの2点に絞って解説をしていきたいと思います。 肝斑とは 肝斑は30-50代の女性に多く見られる茶褐色斑状の顔面色素沈着です。特徴としては左右対称性に見られ、頬骨という骨の上に一致して認められることが多いです。実はまだ原因は解明されていないことが多く、ホルモンバランスや摩擦などいろいろなことが原因でできるといわれております。 ただ、実際には肝斑の診断か迷うことも多々ありますが、当院ではまず肝斑の可能性が少しでもある場合にはトラネキサム酸とビタミンCの内服を数か月行います。トラネキサム酸はプラスミン活性を抑制してメラニン産生・増殖を抑制し、ビタミンCには美白効果があるため併用することでさらに効果的に肝斑に対して有効に働きます。ビタミンEは施設ごとによって組み合わせたりするケースもありますが、当院では併用はしておりません。 ☆トラネキサム酸について・・・市販薬でトランシーノとして販売されており、広く認知されているように思います。よく質問を受けるのがトラネキサム酸を長期間内服してもよいか、休まないといけないのではと質問を受けます。市販のトランシーノは2か月内服して休薬をすることを推奨しているようですが、これはトランシーノの安全性のテスト期間が2か月であったことに起因していると考えられており明確な根拠がありません。またトラネキサム酸は長期内服をするほど改善率が高くなるデータも示されており当院でも内服期間は長めに設定しております。 トラネキサム酸の内服は500mg~1500mg/日で施設ごとに異なりますが、確かに一部のデータで内服量が増加すると治療効果が高くなると指摘されましたが、大きな差はなく明らかではないといわれております。また日本のレーザーの第一人者である葛西健一郎先生の著書である「シミの治療」でも500mgで効果は十分期待できるとの記載もあり、当院でも必要最低限の量である250mg2錠分2を推奨しております。海外の論文でも同様に500mgでの有効性を示す報告がされております。(Bala,H.R.et al:Oral tranexmic acid for the treatment of melasma:a review.Dermatol Surg.44:814-825,2018) 肝斑に対してときどき保険診療で内服薬を投与している施設もありますが、保険診療で処方することは厚生局からも禁止する通達がきており基本的には自費診療となります。 ☆肝斑に対する外用剤について・・・ハイドロキノンとビタミンA、トラネキサム酸の外用を組み合わせて行っております。ハイドロキノンはチロシナーゼを拮抗阻害してメラニン促成を阻害する働きがあり、ビタミンAはメラニンの排泄があるためこの2つを組み合わせる治療を推奨しております。上記の内服と併用することでより効果的に肝斑の治療が可能となるため積極的に行っております。当院ではジェイメック者のリストアシリーズのハイドロキノン4%と株式会社ナノエッグのナノメッドVAエッセンスを主に使用しており好評を頂いております。 ☆肝斑に対するレーザー治療について・・・最近ではトーニングレーザー、ピコレーザーなど実に様々な治療が登場してきており、肝斑にはレーザーは禁止と考えられておりましたが実に多くの施設で上記のような治療が行われておりますが、いまだにその結果に関しては確実に改善するとは言い難いものが多く、日本形成外科学会でも議論が分かれるところです。当院でもまずはトラネキサム酸とビタミンCの内服とハイドロキノンやビタミンAの外用から開始を行います。個人差はありますが、2-4か月程度内服すると肝斑が落ち着いてくるのでその状態で残ったシミに対してレーザーを行うようにしております。I ☆肝斑に対するエレクトロポレーション・・・これまでイオン導入ではお肌に導入できなかったトラネキサム酸を皮膚の深部に浸透できるため有用とされております。坪内先生の報告(DermaNo262)によると肝斑に有効な成分をエレクトロポレーションで2週おき、5回行った例で肝斑の改善が認めらており、複数回の治療の重要性が指摘されております。 ☆当院で行う肝斑治療・・・以上をまとめるとトラネキサム酸とビタミンCの内服が重要であり、さらに外用剤とエレクトロポレーションを組み合わせることでより効果的に効率よく治せると考えております。重要なのは肝斑を見逃さないことであると思います。 しみ(日光黒子) しみと思い浮かべるとお顔にある円形の黒い斑点を思い浮かべる方が多いと思います。これを医学的に日光黒子と呼びます。名前の通り紫外線の影響や皮膚の加齢性の変化による影響が大きく皮膚の基底層にあるメラニン生成が過剰になったものを指します。しみを放置しておくとだんだん表面がざらざら、イボのように盛り上がってくる脂漏性角化症に変化していきます。 ☆Qスイッチルビーレーザー・・・アザなどの治療に使用するレーザーを当院では使用しております。レーザーは選択的に色が濃いメラニン色素に吸収されしみを破壊し、カサブタになっていきます。それが脱落すると下からピンク色の肌が見えてきます。当院ではレーザー照射後2週間テーピングと軟膏による保湿を行ってもらうように推奨しております。カサブタが脱落した後の皮膚は弱く、色素沈着になりやすいため優しく扱うことが重要ですが、日本人はレーザー照射後に色素沈着になりやすいことが指摘されており、カサブタが脱落したあとはハイドロキノンによるアフターケアをほぼ全例で行っております。 最近ではフラクショナルという装置を用いたレーザー照射も行っております。これは従来の方法に比べて痂疲形成と色素沈着になりにくく、テーピングもしなくてよいため周囲からも気がつかれにくいというメリットがあります。ただ、効果としては1回では取り切れないことが多く3回程度の照射が必要になりますが、近年では韓国をはじめアジア圏では長いダウンタイムを嫌う傾向にあるため当院でもフラクショナルレーザーを希望する方が増えております。 ☆ルビーフラクショナルトーニング・・・当院ではルビーレーザーのフラクショナルトーニングを行っております。トーニングとは少し弱めの出力で広範囲にレーザーを照射することでシミの治療と毛穴の引き締めを行う治療です。ソバカスの方や薄いシミが広い範囲で存在する方に非常に有効であり3回の治療を受けてもらうようにしております。ダウンタイムも非常に短いため日常生活の中でも取り入れやすく、定期的にお肌のメンテナンス目的でも受けて頂けます。 ☆炭酸ガスレーザー・・・シミが少しでも盛り上がるようなザラザラしたシミは光レーザーでは取れにくいので炭酸ガスレーザーのように物理的に表面を蒸散させるレーザー治療を行います。他のレーザーよりも痛みが強いため局所麻酔を行ってから切除をしております。炭酸ガスレーザーは皮膚の深部までも到達するためほくろの切除などにも使用されます。 ☆しみ(日光黒子)に対する当院でのレーザー治療について・・・基本的に肝斑の合併のない場合には初回からレーザー治療を行います。レーザーはテーピングを貼るQスイッチルビーレーザーかテーピングをしないフラクショナルレーザーを選択してもらっております。費用はシミのサイズで決まる(目安1mm 1000円)ので診察時にお尋ねください。フラクショナルレーザーの場合3回前後の治療が必要になりますが、2回目以降は初回の半額で照射をしております。 文責  わかば皮ふ形成クリニック 院長 江草豪 (日本形成外科学会認定 形成外科専門医/指導医)
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME