脂肪腫の治療(摘出)
わかば皮ふ形成クリニックの脂肪腫摘出(2023年4月~2026年6月)
| 軟部腫瘍摘出術 | 112件 |
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脂肪腫(リポーマ)は、皮下に発生する軟部腫瘍の中で最も頻度が高い良性の「できもの」です。広島市安佐南区のわかば皮ふ形成クリニックでは、日本形成外科学会認定の形成外科専門医および指導医である院長が、見た目の美しさにも配慮した日帰り手術を行っています。脂肪腫は痛みがないため放置されがちですが、時間とともに大きくなる性質があり、中には握り拳ほどのサイズに成長して周囲の組織を圧迫することもあります。私たちは、ただ腫瘍を取り除くだけでなく、皮膚の外科専門施設として「いかに傷跡を目立たなくするか」という形成外科的な技術を追求し、地域の方々が健やかな毎日を過ごせるようお手伝いをしております。下祇園駅より徒歩5分の当院では、皮膚科と形成外科、美容皮膚科を並行して診療しており、お悩みに対してスムーズな解決策をご提案できることが強みです。体のできもので少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
脂肪腫(リポーマ)の症状について
脂肪腫の多くは、皮膚のすぐ下にある脂肪組織から発生します。触るとぷにぷにとした柔らかい感触があり、指で押すと皮膚の下で動くような可動性が特徴です。一般的には痛みを感じることは少ないですが、血管が多く含まれるタイプなどでは、時に痛みや違和感を伴うことがあります。
脂肪腫は人に発生する良性腫瘍のなかで最も頻度が高く、有病率は成人人口の約1〜2%と推計されています(StatPearls, NCBI Bookshelf, 2025)。年間発生率は1,000人に対して約2.1件と報告されており(同上)、スペインの後ろ向き研究では良性軟部腫瘍全体の50.7%を脂肪腫が占めたとされています(Medscape, Cutaneous Lipomas, 2025)。
脂肪腫ができやすい部位には傾向があります。当院の診察でも、以下のような部位に認めることが多いです。
- 背中や肩、首周り
- 太ももや腕
- 額(おでこ)
- お腹周り
通常、皮膚の表面に赤みや熱感が出ることはありません。しかし、年単位でゆっくりと拡大し、目立つようになるとコンプレックスの原因になることもあります。また、サイズが大きくなると下にある筋肉や神経を圧迫し、重だるさやしびれを感じることも稀にあります。皮膚の深い層や筋肉内にできた場合は、表面からはあまり動かない「硬いしこり」として触れることもあります。
よく似た症状に「粉瘤(アテローム)」がありますが、粉瘤は皮膚の袋の中に垢が溜まったもので、特有の臭いや炎症を伴うことが多いため区別が必要です。詳細は「粉瘤の治療(切除)について」のページも併せてご覧ください。
脂肪腫(リポーマ)の原因について
脂肪腫が発生するはっきりとした原因は、現在の医学でも完全には解明されていません。しかし、臨床の現場やこれまでの研究から、いくつかの要因が関わっていると考えられています。多くの場合、遺伝的な体質や環境要因が複雑に組み合わさって発生します。
遺伝的要因と体質
単発性の脂肪腫は多くの方に見られますが、全身にたくさんの脂肪腫ができる「多発性脂肪腫」の場合は、家族性に遺伝する傾向が指摘されています。特定の遺伝子の変異が、成熟した脂肪細胞の過剰な増殖を引き起こしていると考えられます。分子遺伝学的研究では、孤発性脂肪腫の少なくとも70%に染色体12q13-15領域の再構成が認められ、HMGA2(High Mobility Group AT-hook 2)遺伝子の発現異常が脂肪腫形成に関与していると報告されています(Pendás-Flores A et al., Clin Cosmet Investig Dermatol. 2020)。このHMGA2遺伝子はクロマチン構造の調節や細胞増殖に関わる転写因子をコードしており、その異常が脂肪細胞の過剰増殖スイッチとなる可能性が示されています。また、家族性多発性脂肪腫(Familial Multiple Lipomatosis: FML)は常染色体優性遺伝形式をとる疾患であり、HMGA2遺伝子やPTEN遺伝子の変異との関連が研究されています(Ann Intern Med Clin Cases, 2024)。多発性脂肪腫は脂肪腫患者全体の約5%を占めるとされています(同上)。
外傷や慢性的刺激
過去に強くぶつけた場所や、常に圧迫や摩擦が加わっている場所に脂肪腫ができることがあります。組織がダメージを受けた際の修復過程で、脂肪細胞の増殖スイッチが入ってしまう可能性が推測されていますが、医学的な証明には至っていません。
加齢による影響
脂肪腫は幼少期から存在している場合もありますが、多くの方が受診されるのは40代から50代以降です。これは、時間をかけてゆっくり大きくなるため、ある程度の年齢になってから気づくことが多いためです。また、肥満や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病との関連も研究されていますが、痩せている方にも発生するため、一概に肥満だけが原因とは言えません。
2025年に発表されたイスラエルの多施設横断研究(n=7,868)では、脂肪腫患者は一般人口と比較して脂質異常症・高血圧・肥満・2型糖尿病のいずれについても有病率が有意に高く、特に35歳以降で3つ以上の代謝リスク因子が集積する傾向が認められました(Lipomas are associated with a higher prevalence of metabolic syndrome components, PMC, 2025)。ただし、この研究は相関を示すものであり、因果関係を直接証明するものではありません。痩せた方でも脂肪腫は発生するため、生活習慣病があるから必ず脂肪腫ができるわけではなく、あくまで「関連が示唆されている」段階です。
脂肪腫の病気の種類について
一口に脂肪腫と言っても、顕微鏡で組織を詳しく見る(病理検査)と、いくつかのバリエーションに分かれます。これらは摘出の難易度や再発の可能性、症状の有無に関わってきます。
一般的な脂肪腫
最も多く見られるタイプで、成熟した脂肪細胞が薄い膜に包まれています。周囲の組織と境界がはっきりしているため、手術で「にゅるり」と摘出しやすいのが特徴です。
血管脂肪腫
脂肪組織の中に細い血管がたくさん通っているタイプです。通常の脂肪腫よりもやや硬く、押さえると痛みを感じることが多いため、早めの摘出を希望される方が多い疾患です。血管脂肪腫は若い成人(20〜30代)の前腕や体幹に好発し、複数個同時に発生することが多いのが特徴です(Cleveland Clinic, 2021)。組織学的には成熟した脂肪細胞と毛細血管が混在し、血管内腔にフィブリン血栓が認められることが病理学的な特徴とされています(Pathology Outlines, 2026)。痛みの程度は血管の多寡とは必ずしも相関しないことが知られており(Howard & Helwig, Arch Dermatol, 1960; Hum Pathol 1981より引用)、除痛を目的とした外科的切除が推奨されます。
線維脂肪腫
脂肪の中に硬い線維組織が混ざっているタイプです。境界がやや不明瞭なことがあり、周囲の組織と癒着している場合があります。
筋肉内脂肪腫
皮下ではなく、筋肉の中や筋肉の間に発生する脂肪腫です。深部にあるため表面からは触れにくく、診断にはMRIなどの精密検査が有用です。手術の際は、筋肉を傷つけないよう慎重な操作が求められます。 筋肉内脂肪腫は浸潤性増殖をとる傾向があるため、通常の皮下脂肪腫に比べて術後再発率が高いことが報告されています。後ろ向き研究では術後局所再発率が50〜80%に達するとする報告もあり(Han et al., Biomed Res Int. 2014)、完全切除を徹底することが重要です。一方、辺縁切除(マージナル切除)を行った144例のコホート研究では再発率は6%にとどまり(Jauffred et al., Med Princ Pract. 2020)、術前MRIで腫瘍範囲を正確に把握したうえで切除を行うことが再発リスクの低減に寄与すると考えられています。また、筋肉内脂肪腫は低悪性度の脂肪肉腫(異型脂肪腫性腫瘍)との鑑別が術前診断でも困難なため、術後の病理検査が重要になります(Han et al., 同上)。
注意が必要な「脂肪肉腫」
非常に稀ではありますが、脂肪腫と似た見た目で悪性の「脂肪肉腫」というがんが存在します。急速に大きくなる、極端に硬い、といった特徴がある場合は注意が必要です。当院では診断に迷う場合や悪性が疑われる際は、速やかに総合病院を紹介する体制を整えています。
MRIを用いた脂肪腫と脂肪肉腫の鑑別に関するシステマティックレビュー(2001〜2022年の文献を対象)では、悪性を示唆するMRI所見として「腫瘍径110mm以上」「60歳以上」「下肢への好発」「不整形」「2mm超の厚い隔壁」「造影効果」などが挙げられており、感度66〜100%・特異度37〜100%と報告されています(Use of radiologic imaging to differentiate lipoma from ALT/WDL, PMC, 2024)。ただし、MRI単独での確定診断には限界があり、専門医による経験豊富な読影と病理検査の組み合わせが不可欠です。当院では診断に迷う場合や悪性が疑われる際は、速やかに総合病院を紹介する体制を整えています。
脂肪腫の治療法について
脂肪腫は良性腫瘍ですので、小さくて症状がなければ経過観察でも問題ありません。しかし、自然に消えることはなく、大きくなると手術の傷跡も長くなってしまうため、気になる場合は早めの治療をお勧めしています。当院での基本的な治療の流れは外科的摘出手術です。
手術の詳細については「当院の日帰り手術」のページでも詳しく解説しています。
術前検査と診断
まずは触診と超音波検査(エコー)を行い、腫瘍の大きさや深さ、周囲の血管との関係を確認します。大きなものや深い場所にある場合は、提携病院でMRI撮影を行っていただくこともあります。
皮下腫瘍摘出術(日帰り手術)
局所麻酔を行い、痛みが完全になくなったことを確認してから開始します。手術時間は腫瘍のサイズや場所にもよりますが、通常15分から30分程度です。形成外科医として、傷跡が目立ちにくい「皮膚割線」に沿った切開を心がけています。
縫合とアフターケア
腫瘍を取り出した後の空洞を埋めるように「真皮縫合」と呼ばれる中縫いを行い、皮膚の表面を細い糸で丁寧に合わせます。大きな脂肪腫の場合は、術後の血腫(血の塊)を防ぐために「ドレーン」という細い管を1日から2日程度留置することもあります。
詳細は「真皮縫合について」の解説を参照してください。
実際の手術例は以下の通りです。大きなものであっても、可能な限り小さな切開で済むよう工夫しています。
病理検査の実施
摘出した組織は、必ず専門の検査機関に出して病理検査を行います。これは、見た目では良性と判断できても、目に見えない細胞レベルで悪性所見がないかを100%確認するためです。結果が出るまでには約2週間かかります。特に脂肪腫と脂肪肉腫(異型脂肪腫性腫瘍)は術前MRIでも鑑別が困難なケースがあり、専門医10名によるMRI読影研究でも最終病理診断との一致率は69%にとどまったと報告されています(PMC, 2013)。このことからも、摘出標本の病理検査は診断確定のための不可欠なステップです。
料金について
脂肪腫の摘出手術は、健康保険が適用される「保険診療」です。費用は腫瘍の大きさや部位によって決まります。
以下は、3割負担の場合の目安料金です。
| 項目 | 治療費(3割負担・病理検査込み) |
|---|---|
| 四肢・躯幹(肩、腕、太もも、胴体等) | 約29,000円前後 |
| 手・足 | 約15,000円前後 |
※上記費用には手術費用の他に初診料・再診料・処方料(約1,000円程度)が別途かかります。
脂肪腫の治療についてのよくある質問
Q1. 手術は痛いですか?
A1. 手術そのものは局所麻酔をしっかり効かせてから行いますので、痛みを感じることはありません。最初の麻酔の注射をする際に少しチクッとした痛みがありますが、細い針を使用し、なるべく痛みを和らげる工夫をしております。
Q2. 傷跡は残りますか?
A2. 外科手術ですので、切開した部分に線状の傷跡は残ります。しかし、当院では形成外科専門医が皮膚のしわの流れ(皮膚割線)に沿ってデザインし、真皮縫合という特殊な技術を用いて丁寧に縫合するため、数ヶ月から半年程度で非常に目立たなくなることがほとんどです。
Q3. 仕事や家事はいつからできますか?
A3. 基本的には翌日からデスクワークや軽い家事は可能です。ただし、重いものを持ったり、激しい運動をしたりするのは1週間程度控えていただく必要があります。大きな腫瘍を摘出した場合は、数日間安静が必要なこともあります。
Q4. お風呂には入れますか?
A4. 術後1日から2日程度、傷口を圧迫固定させていただきます。ドレーンを留置していない場合は、翌日からシャワー浴が可能です。抜糸までは湯船に浸かることは控えていただいております。
Q5. 再発することはありますか?
A5. 脂肪腫を膜ごと完全に摘出すれば、同じ場所に再発することは稀です。ただし、腫瘍の一部が残っていたり、多発性脂肪腫の体質があったりする場合は、別の場所に新しくできる可能性はあります。術後の定期診察でしっかり確認させていただきます。最近の報告( 家族性多発性脂肪腫の治療を扱った文献)では、完全摘出後の局所再発率は1〜2%と報告されており(PMC, 2024)、皮下脂肪腫においては適切な切除により再発リスクは低く抑えられます。ただし、筋肉内脂肪腫(浸潤型)では前述の通り再発率が高いため、術後の定期経過観察が重要となります。腫瘍の一部が残っていたり、多発性脂肪腫の体質があったりする場合は、別の場所に新しくできる可能性はあります。術後の定期診察でしっかり確認させていただきます。
参考文献
- Kolbe AB, et al. Lipoma Pathology. StatPearls [Internet]. NCBI Bookshelf. 2025.
- Cutaneous Lipomas: Background, Pathophysiology, Epidemiology. Medscape. 2025.
- Lipomas are associated with a higher prevalence of metabolic syndrome components: a multicenter cross-sectional study. PMC. 2025.
- Pendás-Flores A, et al. Clinical and Molecular Investigation of Familial Multiple Lipomatosis: Variants in the HMGA2 Gene. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2020; 13:41-50.
- Below the Surface: Genetic Underpinnings and Clinical Manifestations of Familial Multiple Lipomatosis. Ann Intern Med Clin Cases. 2024.
- A Comprehensive Case Report on Familial Multiple Lipomatosis. PMC. 2024.
- Cellular angiolipoma: a case report and review of the literature. PMC. 2023.
- Angiolipoma. Pathology Outlines. 2026.
- Han I, et al. Treatment for Intramuscular Lipoma Frequently Confused with Sarcoma: A 6-Year Retrospective Study and Literature Review. Biomed Res Int. 2014.
- Jauffred SF, et al. Low Recurrence Rate and Risk of Distant Metastases following Marginal Surgery of Intramuscular Lipoma and Atypical Lipomatous Tumors of the Extremities and Trunk Wall. Med Princ Pract. 2020; 29(3):203-210.
- Use of radiologic imaging to differentiate lipoma from atypical lipomatous tumor/well-differentiated liposarcoma: Systematic review. PMC. 2024.
- Can Experienced Observers Differentiate between Lipoma and Well-Differentiated Liposarcoma Using Only MRI? PMC. 2013.
院長より
脂肪腫の治療は、単に「腫瘍を取る」だけではなく、その後の患者さんの生活の質(QOL)をいかに高めるかが重要だと私は考えています。私たちは、広島市安佐南区祇園の地で、形成外科専門医・指導医としての知識と技術を最大限に活用し、日帰り手術に真摯に取り組んでおります。特に「傷跡」に対する不安は、手術を受ける上で最大のハードルになるでしょう。当院では、がんセンターでの再建外科(組織を治す医療)の経験を活かし、今は患者さんの健やかな日常を取り戻す「再健外科」として、美しさと機能性の両立に注力しています。
「このくらいの大きさで受診していいのかしら」「痛くないからまだ大丈夫だろう」と悩んでいる間に、脂肪腫は少しずつ大きくなっていきます。大きくなってからでは手術の負担も増えてしまいます。広島で地域の方々のお悩みに寄り添い、少しでも早く不安から解放されるお手伝いをすることが私の使命です。皮膚科の診察も並行して行えますので、まずは「できもの相談」としてお気軽にご来院ください。一緒にベストな治療法を考えていきましょう。
当院の手術環境や体制については「日帰り手術について」のページもご覧ください。
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