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皮膚移植(植皮術)、皮弁移植について

ケガによる物理的な皮膚の欠損や癌などの治療による皮膚の欠損、火傷や皮膚感染症による皮膚の壊死など皮膚移植が必要な場面は日常でも起こることがあります。皮膚が欠損した場合にはまず縫合(縫い閉じる)ができるかを考えます。縫合が困難な場合に後述する皮膚移植(植皮術)や皮弁移植(局所皮弁)という方法を選択します。どちらの方法にもメリット、デメリットがありますが、欠損の大きさや部位によって術式を選択しています。

皮膚移植(植皮術)

植皮は移植する部分の状態に左右されます。骨や腱などの上には皮膚は生着しにくく、血流の良い組織が残存していることが前提となります。骨や腱など深部臓器が露出する場合には後述する皮弁移植を考えます。皮膚移植には薄い皮膚を移植する分層植皮術、分厚い皮膚を移植する全層植皮術に分類されます。分層植皮術は皮膚が薄いため生着がしやすく感染に強いといった利点がありますが、若干の拘縮や色素沈着を来すことがあります。全層植皮術は皮膚が厚いため生着がややしにくいことがありますが、拘縮や色素沈着といった合併症が少なく仕上がりは分層植皮術に比べると優れているといった点が挙げられます。ただ分層植皮術には特殊な皮膚を採取する器具と全身麻酔が必要なことが多いため皮膚移植の面積が大きい場合には近隣施設をご紹介させて頂きます。小範囲の欠損であれば当院で局所麻酔下の上に行うことが可能です。その場合、太ももからカミソリで皮膚を採取したり鼠径部などからメスを用いて皮膚を採取し移植します。皮膚の採取部は縫い閉じたり、創傷被覆材を用いて上皮化させることがあります。皮膚移植のデメリットは皮膚を採取した部分に傷跡が残るということも挙げられます。そのため出来るだけ目立たない部分(衣服でかくれる)を選択します。皮膚の移植は簡単にまとめると体のどこからか採取した皮膚を欠損部にパッチワークのように移植して固定するということになります。ただ皮膚が生着するには少なくとも10日間前後はかかりますのでその間の患部の安静が必要になります。われわれ形成外科医は移植した皮膚の固定法にtie over固定、陰圧閉鎖デバイスによる固定を好んで用います。tie over固定とはナイロンの糸を俵結びのようにガーゼと一緒に固定することで適度な圧迫を行う方法を指します。最近では陰圧閉鎖デバイス(別項で解説)も様々な種類があり、これを植皮の固定に用いることがあります。当院ではPICO®(スミスアンドネフュー社)を好んで使用しております。いかにして移植した皮膚がをずれないように固定するかがポイントとなり、それには患者様自身の安静を保つ努力も必要となってきます。ただ実際には仕事などもあり安静が保てないこともあるかと思いますのでそのような場合には後述する皮弁移植術を選択します。

皮弁移植(有茎皮弁)

皮弁は植皮とは異なり、皮膚と皮下組織(脂肪や筋膜も)を含めて皮膚を動かす手術のことを指します。欠損の近傍から皮弁を作成するため質感の同じ組織を欠損部に移動させることが可能です。皮弁を採取した部分は縫合(場合によっては植皮)します。皮弁は植皮と異なり皮弁の特定の部位を繋げたまま移動(有茎皮弁という)させるので移動範囲に制限が生じ、皮膚のゆがみなどが生じることがあります。また、縫合した傷が幾何学的になってしまうため必要以上に傷が目立つことがあります。利点としては欠損部の近くの皮膚を用いるので質感に違和感のない仕上がりが期待できる、骨や腱などが露出した場合に有効である、植皮ほど厳重な安静が必要でないため創部の管理が容易であるといった点が挙げられます。ただ、切開と剥離範囲が広くなるため麻酔の使用量が多くなることがあり、欠損部が大きい場合は全身麻酔が必要になることがあります。有茎皮弁で被覆できないほどの欠損であれば身体の別のところから皮弁を採取し移植する遊離皮弁移植術が必要となります。これは顕微鏡下に血管を吻合する必要があり、特殊な基材と技術を要します。

合併症

植皮術、皮弁移植術に起こる合併症について解説します。

植皮・皮弁の壊死脱落

移植した組織の下に血腫(血の塊)が形成されたり、感染が起こったりすることで皮膚や皮弁が壊死脱落することがあります。そのため植皮の場合はできるだけ安静を保って頂き、必要であれば抗生剤の投与を行います。また、ドレーンといって血抜きの管を挿入したりします。術後は翌日、翌々日には再診させて頂き、必要であれば5日目前後で再診をお願いすることがあります。血腫形成や感染兆候が認められれば創部の洗浄などを行ったりすることがあります。その場合は頻回に外来に通院して頂く可能性があります。

瘢痕拘縮

特に分層植皮の場合にひきつれを起こすことがあります。また、移植した部位が関節の近くなどであればより認める頻度が高くなります。ひきつれが高度な場合は皮弁移植や全層植皮を組み合わせてその予防を行いますが、全身麻酔が必要になることが多く近隣施設にご紹介させて頂く可能性もあります。

整容面の問題

植皮では欠損から離れた部分から皮膚を採取して移植するとカラーマッチや質感が異なるため植皮部分が目立つことがあります。特に術後1年は植皮部が目立つことがあります。そのため保湿や遮光などできる限りの保存的治療を行いながら経過を観察します。皮弁移植では傷が複雑な形になるため目立つことがありますが、顔面などでは目立たないことのほうが多いと思われます。

再手術の可能性

植皮が脱落したり皮弁が壊死したりすると基本的には再手術が必要になります。手術をしなくでも瘢痕治癒することがありますが、拘縮や整容面の低下を起こす可能性が高くなってしまいます。再手術は患者様にとっても肉体的・精神的負担が多いものです。できるだけそうならないように術後の安静など患者様のご協力が必要になりますのでご理解をお願い致します。

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